往復書簡 #2 よう〈モントリオール→京都〉

お手紙ありがとう。
そして往復書簡へのお誘いにノッてくれてありがとう。私からは挨拶もなしにお隣りのあこちゃんちの庭に紙ヒコーキ飛ばすような投げかけだったのに、返ってきたお返事には丁寧な折り目がついてるみたいでうれしかった。感謝。

紙ヒコーキを飛ばしてからお返事を待つあいだ(同時に次に何を飛ばすか考えているあいだ)、こちらではカサカサと落ち葉を踏みつつ日々を過ごしていました。私たちの間にある半日分の時差、時差分の距離にも思いを馳せながら。私たちは今、ふと思い立って駅地下のバー喫茶で夜更けに待ち合わせしたり、賞味期限があさってまでのお土産のお饅頭をそっと玄関のドアノブに届けたりすることができる距離にいない。ましてや引き戸2枚分を隔てた向こうに互いの寝床のあった1年半前の暮らしからは、随分離れた今を生きているのですね。要するに、最近ちょっと寂しい。例年より早いらしい雪も降りはじめて、日の短い冬を迎えています。

我々の臓器はそれぞれの周期で新陳代謝しているらしいですね。大体3ヶ月程度で多くの細胞が入れ替わるというけど、ここに住み始めてぴったり3ヶ月が経ったつい先日、最後の脱皮に手こずるかのように風邪を引きました。私の風邪は尾を引く。日本を出る前に健康への望みを託して食べた納豆なんてもう体のどこにも残っていないのだろうか。それでも自分という存在を変わらず保っているつもりだから不思議だなと思います。

今朝食べた食パンはどこへ行くんだろう。私の一部になるらしい。あの日焼いたパンはどこへ行ったんだろう。匂いや音は? もう誰の身体にもあのパンは残っていないかも。でも少しだけおぼえているかも。
次はどんなパンを焼きましょうかね。

これを書いてから少し時間を置いているうちに、新しいフランス語の学校に通い始めた。それから今月2度目の風邪を引いた。やっぱり尻尾の皮が残っていたみたい。新しい言葉を習うことについては話したいことがたくさんあるのだけど、次回にとっておくことにします。世界を言葉で組み立てるまでにいくつの単語が必要なんだろうね。

2025.11.28 18:22(モントリオール時間)
家の最寄りのバス停で降りたところ